氷上回廊とは
ユーラシア大陸の東端に浮かぶ日本。 雨や雪が豊富なモンスーンアジアで、
複雑な地形と多彩な風土が特徴です。
兵庫県は中央部に東西につらなる中国山地(標高1,000m~1,500m)があります。
この中国山地を挟んで、南側は瀬戸内海に面し広い平野部を持つ瀬戸内沿岸域となり、
北側は日本海に面し山地傾斜面が広がる日本海沿岸域となります。
山に挟まれながら、南北に伸びる低地帯
今回の舞台、氷上回廊(ひかみかいろう)は、本州の中でやや西寄りに位置する山あいのまち、
兵庫県丹波市氷上町(ひかみちょう)石生(いそう)付近を中心に、瀬戸内海側へ流れる加古川と
日本海に注ぐ由良川をつなぐ南北に伸びた低地帯です。
水の分かれる場所『中央分水界』
日本列島の大きな特徴のひとつは、その中央(赤線部分)を貫くように、1,000m~3,000m級の山々を含む山岳地帯が、延々と5,000㎞も続いている事です。
- 中央分水界
- 頂上付近の高さは1,000m~3,000m
- 水の流れ
- 水が二手に分かれる
5,000km(中央分水界を直線に伸ばした場合)
そして、この山々の頂上付近(赤線部分)を境に、水の流れは太平洋(瀬戸内海)側と日本海側に大きく分かれ、気候にも起伏が生じ、降雨量や積雪量の異なる多彩な気候風土が育まれてきました。
この赤線部分は水を二手に分ける境界という意味から、中央分水界、または中央分水嶺(れい)と呼ばれ、日本列島を太平洋(瀬戸内海)側と日本海側に隔てる“高い壁”のようなものです。
本州一低い、中央分水界
ところが、この中央分水界(赤線部分)の中に標高わずか95mという、とても低い場所があります。 兵庫県丹波市氷上町石生は地元で「水分れ(みわかれ)」と呼ばれ、本州の内陸部で一番標高の低い中央分水界です。
ここは山々に挟まれた低地です。ごくありふれた水田や田舎まちの風景の真ん中で水が二手に分かれ、一方は瀬戸内海側の加古川へ、もう一方は日本海側の由良川へ流れています。そして、この二つの川に沿って広がる低地帯は、あたかも瀬戸内海と日本海を結ぶひとつの道のようです。
風が出会い、水が生まれ、生命が行き交う地
瀬戸内海からの暖かい風と日本海からの湿った風は、その道をたどるように吹き渡り、ちょうど兵庫県丹波市あたりで出会います。 双方の風が運んできた雨や雪は大地を潤し、春秋には美しい霧の風景を生み出します。
この豊富な水と独特の地形の中で、南北の生きものたちもこの道を頻繁に行き交い、人々の豊かな暮らしや文化も育まれてきました。
また、この地は生きものの分布や分化に大きな影響を与え、全国的に見ても生物種が多様な地域になっています。
本州で最も低い標高わずか95mの中央分水界「水分れ」(兵庫県丹波市氷上町石生)は、瀬戸内海へ流れる加古川と日本海に注ぐ由良川をつなぐ低地帯の中心地。
山々に挟まれた長い低地帯は、あたかも宮殿や寺院の回廊のように多彩な生命が出会い、行き交う場になっているのです。 そんな様子から、この低地帯は、“氷上回廊”と名づけられました。